3 −大ワラジ(大草鞋)タイプ
大ワラジ(大草鞋)タイプは一風変わった形をしていますが、鹿島様タイプの変形と思われます。村境にある大きな木の中程に大型なワラジを付け、その下に太い注連縄して、この領域を神聖化しています。荒処集落が有名で、ここでは木の根元の古い木を立て鹿島大明神の札が貼られています。隣接する深間内集落でもワラジと注連縄と同じ形式をもっており、根元には謂れがありそうな石碑がありました。ワラジには無病息災や道中安全などの意味もありますから道祖神と同様な働きをもっていたと思われます。江戸時代の紀行家 菅江真澄は醍醐集落周辺のスケッチを残しており、巨大な人形道祖神が集落境に描かれています。この集落ではワラジを人形道祖神の顔の高さに見立てているのではないかと思うほど高い位置にワラジが奉納されています。
大ワラジというと寺院の山門内部に仁王像や金剛力士像などと一緒に奉納されているをよく見かけます。ワラジは仁王様が履く物(地域によって異なりますが巨大化あるいは数量が異常に多くなる傾向があります)とされ、浅草の浅草寺などが有名ですが、寺院を守るだけでなく健脚の神ともされ信仰の対象となっています。秋田県内でも人形道祖神を「仁王様(おにょさま)」などと呼ぶ地域があることからからも、集落を守り健脚(道中安全)の神とされたと考えられます。巨大藁人形ではありませんが高く取り付けられた大ワラジや木製の脇差は仁王様を暗示させるものとして集落の民俗信仰として息づいています。
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