秋田県内にある寺院建築の中で楼門を取り上げました。あまり知られていないので少ないと思っていると思いますが案外多いです。楼門は寺院建築の中でもその寺院の顔となる存在でかなり力をいれて形や大きさなど様々です。良く見ると本堂の建築に対して色彩や彫刻などかなり自由に表現していて比べてみるのも面白いかもしれません。又、総門や山門はその寺院に入ってくる一種の結界門としての役割をもっていて、金剛力士像や仁王像、不許葷酒入山門の石碑などがその周辺に配置され、寺院の境内を神聖な空間として他と区別する意味合いを持っています。一言で楼門建築と言ってもピンとこないかも知れませんので、少しづつ説明していきます。寺院建築の一端が解るかもしれません。
楼門建築の形式(1)−楼門の種類
まず、楼門建築を3つの形式に分けて見ました。寺院建築は宗派や規模、考え方によって採用する形式は変わってきます。あまり意識していない場合も多いと思いますが、形式を分けることによって寺院建築の見え方が変わると思います。(1)の写真(秋田市:天徳寺)は正式には二重楼門ではありませんがイメージは伝わると思います。天徳寺場合は屋根では無く付け庇だと思います。
楼門建築の形式(2)−型式
寺院建築の中で門の形式名称に四脚門や八脚門など聞かれると思いますが、これは文字そのままの意味です。良く見ると柱の数が合わない場合もあるのですが、一般的には前に言った2つに分けられると思います。四脚門は一般的に1間(1.82m)の幅がありその4隅に柱が配置されています。八脚門は3間(5.46m)の幅があり隅と開口部にそれぞれ8本の柱が配置されています。小規模の八脚門は2間幅のもありますが開口部は1間幅を確保しているようです。写真を見比べて見ると良く解ります。
楼門建築の形式(3)−間口形式
この形式は前の柱の数に密接な関係があります。(3)の写真(羽後町:地蔵院)は正式には三間三戸ではありませんがイメージは伝わると思います。秋田県内には三間三戸の楼門は私が知る限り多分ありません。
楼門建築の形式(4)−屋根形式
楼門は山門として総門の後に来る場合もありますが、一般的は敷地の前面に来る場合が多く、寺院建築の象徴的存在です。意匠的にも凝ったものが多く、特に屋根の形が入母屋が多い事からも、かなり寺院の格式など意識して計画されています。ここでは、屋根の形式に意識して見てみましょう。
楼門建築の形式(5)−屋根の素材
今回は楼門建築の屋根の素材について説明していきます。寺院建築の顔でもあった楼門形式の山門や総門はかなり意識したいところです。瓦を使用した場合は重厚感があり豪華な印象を受けますが金銭的問題や重量が重い事などが理由で思ったより採用されていないような気がします。それに対し金属板葺きは安価で軽量な為、楼門の多くの屋根が採用しています。金属板葺きには銅板や鉄板などの素材や、亀甲葺きや竪平葺きや横平葺きなど様々の葺き方があるので様々組み合わせが出来ます。桧皮葺きは本来主流だったと思われますが現在はほとんど使われていません。茅葺屋根はかなり哀愁を感じますが桧皮葺きと同様その姿をほとんど見ることは出来ません。
楼門建築の形式(6)−各部詳細(天井・門扉・欄干・窓・組物・彫刻・石碑・仁王像)
今回は楼門建築の各部位について説明していきます。当然人によって見方が異なり、一般的な事柄が多いのですが、ほんの少し見直すことでより理解が深めると思います。単純に天井を1つ見ても2階の床板張りが直接見えるものや、天井を張っているもの、その天井も、折上げ天井や合天井など様々な形式があります。門なのに何故か門扉がないのもよく見かけますし、窓の形も他の建築とは異なります。門の前には不思議な文字の書いた石碑が並んでいたりと、思ったより不思議が多くあるのも寺院建築のおもしろさかも知れません。