建築力士像の容姿から見る地域性の考察

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建築力士像の容姿から見る地域性の考察

 建築力士像の形態その2−容姿

 建築力士像には様々な個性があります。前述した総体的なイメージとは違う個々の表現を大きく8つに分けてみました。当然複合した力士像も多く含まれるのですがある程度管理人の主観で分けています。力士像を作成した職人の気質や癖、地域差などが分かればよいと思っているのですが・・・・。8つ形態には主に力士の座り方と支え方に注目しています。皆様が実際神社をお参りする祭参考にしていただければと思います。

(1)胡坐型−力士像が胡坐を組み背中で支えています。基本形と思われ多数を占めます。
(2)しゃがみ型−力士像は胡坐を組まず膝を上げ持ち上げようとしているようにも見えます。
(3)片膝型−力士像が片足を上げ力を込めているように表現しています。
(4)正座型−力士像が正座をしています。屋根を持ち上げるとは別の意味を持っているように感じます。
(5)片足型−力士像が片足をぶら下げています。余裕の表情が逆に力強さを感じます。
(6)片手支え型−力士像が肩に構造材を乗せ片手で持ち上げています。
(7)両手支え型−力士像が頭に構造材を乗せ両手で持ち上げています。
(8)腕組型−力士像が両手を抱えています。何か思慮しているようにも見えます。

(1)-胡坐型−東成瀬村:水神社
(1)-胡坐型
(2)-しゃがみ型−秋田市:仁井田神明社
(2)-しゃがみ型
(3)-片膝型−横手市:八坂神社
(3)-片膝型
(4)-正座型−横手市:諏訪神社(4)-正座型
(5)-片足型−秋田市:磯前神社
(5)-片足型
(6)-片手支え型−横手市:貴船神社
(6)-片手支え型
(7)-両手支え型−秋田市:岩見神社
(7)-両手支え型
(8)-腕組型−井川町:熊野神社
(8)-腕組型


 建築力士像の容姿から見る地域性の考察

 (1) 容姿別集計結果

(1) 胡坐型− 52箇所 − 52/144*100= 36.11%
(2) しゃがみ型−19箇所 −19/144*100= 13.19%
(3) 片膝型− 26箇所 −30/144*100= 20.83%
(4) 正座型− 12箇所 − 12/144*100= 8.33%
(5) 片足型− 4箇所 − 4/144*100= 2.78%
(6) 片手支え型− 18箇所 − 18/144*100= 12.5%
(7) 両手支え型− 3箇所 − 3/144*100= 2.08%
(8) 腕組型− 6箇所 − 6/144*100= 4.17%
(9) 不  明− 22箇所 − 0/0*100= 0.  %

    調査総数−166−22=144体   

 集計結果より考察

 以上の結果より力士像は秋田県内では胡坐をかいている格好が一番多く36.11%だということが分かりました。次いで片膝を立てているタイプが20.83%で、腕の格好では片手で屋根の隅木を支えているタイプが12.5%という結果でした。全体の87.5%の力士像は腕で屋根を支えるのではなく背中から首にかけて支えています。力士像の基本形は胡坐で首あたりで屋根を支える形が一番多いようです。

 (2) 地域別容姿別集計結果−南部沿岸部

(1) 胡坐型− 3箇所 − 3/16*100= 18.75%
(2) しゃがみ型−5箇所 −5/16*100= 31.25%
(3) 片膝型− 4箇所 −4/16*100= 25.0%
(4) 正座型− 0箇所 − 0/16*100= 0.0%
(5) 片足型− 0箇所 − 0/16*100= 0.0%
(6) 片手支え型− 4箇所 − 4/16*100= 25.0%
(7) 両手支え型− 0箇所 − 0/16*100= 0.0%
(8) 腕組型− 0箇所 − 0/16*100= 0.0%

    調査総数−16体   

 集計結果より考察

 以上の結果より南部沿岸地域の力士像は南部山間地域と比べるとしゃがみ型や片膝型の割合が高く下半身の格好に変化があると言えます。しかし、腕の動きを見ると全体の75%が首から背中で屋根を支える形であまり大きな動きを見る事は出来ません。力士像は太身型が多いのもこの地域の特徴で、力士像の体型と動作、容姿などと関係があるようです。

 (3) 地域別容姿別集計結果−南部山間部

(1) 胡坐型− 41箇所 − 41/74*100= 55.41%
(2) しゃがみ型−2箇所 −2/74*100= 2.70%
(3) 片膝型− 11箇所 −11/74*100= 14.86%
(4) 正座型− 7箇所 − 7/74*100= 9.46%
(5) 片足型− 0箇所 − 0/74*100= 0.0%
(6) 片手支え型− 10箇所 − 10/74*100= 13.51%
(7) 両手支え型− 0箇所 − 0/74*100= 0.0%
(8) 腕組型− 3箇所 − 3/74*100= 4.05%

    調査総数−74体  

 集計結果より考察

 以上の結果より南部山間地域の力士像は胡坐をしている割合が55.41%と半数以上を占めています。片手支え型の中にも胡坐をしている場合がある為、下半身だけ見れば他を圧倒します。正座型は細身タイプの力士像が多い事から、太身の力士像の大半が胡坐をしていると言えます。腕の動きは小さく、変化があるのは片手支え型と腕組型をあわせても18%を越えません。

 (4) 地域別容姿別集計結果−中央沿岸部

(1) 胡坐型− 4箇所 − 4/36*100= 11.11%
(2) しゃがみ型−11箇所 −11/36*100= 30.56%
(3) 片膝型− 9箇所 −9/36*100= 25.0%
(4) 正座型− 1箇所 − 1/36*100= 2.78%
(5) 片足型− 2箇所 − 2/36*100= 5.56%
(6) 片手支え型− 3箇所 − 3/36*100= 8.33%
(7) 両手支え型− 3箇所 − 3/36*100= 8.33%
(8) 腕組型− 3箇所 − 3/36*100= 8.33%

    調査総数−36体   

 集計結果より考察

 以上の結果より中央沿岸地域にある力士像はしゃがみ型が30.56%を占め一番多い形式になっています。片膝型も25.0%あり下半身が変化の富んだ格好をしているのが分かります。片足型なども見られ、彫刻大工がかなり自由な発想で製作にあった事が考えられます。腕の動きも25%の力士像がいて、分類した型以外のものを含めるとさらに数字が上がります。細身の力士像が多い事も影響していると思われ、デザインの構成上、手足が自由に彫りこめる状況にあったと考えられます。

 (5) 地域別容姿別集計結果−中央山間部

(1) 胡坐型− 3箇所 − 3/18*100= 16.67%
(2) しゃがみ型−1箇所 −1/18*100= 5.55%
(3) 片膝型− 7箇所 −7/18*100= 38.89%
(4) 正座型− 4箇所 − 4/18*100= 22.22%
(5) 片足型− 2箇所 − 2/18*100= 2.86%
(6) 片手支え型− 1箇所 − 1/18*100= 11.11%
(7) 両手支え型− 0箇所 − 0/18*100= 0.0%
(8) 腕組型− 0箇所 − 0/18*100= 0.0%

    調査総数−18体   

 集計結果より考察

 以上の結果より中央山間地域の力士像は片膝型が38.89%を占め一番多い型となりました。腕の動きはあまり見られませんが、下半身は南部山間地域と比べ、大きく動きのある形になっています。特に玉川水系に存在するユニーク型の力士像は上記の分類に当てはまらないような形態をしていて、彫刻大工がかなり自由な発想で製作したものと考えられます。

 以上の結果より地域によって力士像の容姿的なものに大きな特徴があることが分かりました。地域による文化の違いや、考え方が異なる事で、同じ力士像とはいえそれぞれの地域の個性が生まれることが証明出来たと思います。昨今のまちづくりを見ても横並びの政策が並び、どれも同じ様な町並みになってはいませんか?数十年前までは、自分達の地域を自分達が考えた結果、自分達の独自の文化が生まれていたのではないですか?

建築力士像容姿一覧表

  名  称 胡坐型 しゃがみ型 片膝型 正座型 片足型 片手支え型 両手支え型 腕組型 不 明 合計 場 所 備  考
熊野神社 熊野神社 由利本荘市亀田 市指定文化財
切通稲荷神社 切通稲荷神社 由利本荘市長坂 市指定文化財
葛岡金峰神社 葛岡金峰神社 由利本荘市葛岡
吉沢神明社 吉沢神明社 由利本荘市吉沢 国登録文化財
日枝神社 日枝神社 由利本荘市前郷
日枝神社 森子大物忌神社 由利本荘市森子
八幡神社 八幡神社 由利本荘市玉ノ池
浄蓮寺 浄蓮寺 にかほ市金浦
金峰神社:象潟 金峰神社 にかほ市象潟
天神社 天神社 東成瀬村
山神神社 平良山神社 東成瀬村
水神社 水神社 東成瀬村
八坂神社 八坂神社 東成瀬村
日吉神社 日吉神社 湯沢市川連町
岩崎八幡神社 岩崎八幡神社 湯沢市岩崎 市指定文化財
八坂神社 八坂神社 横手市雄物川町  
稲荷神社 稲荷神社 横手市雄物川町
田村神社 田村神社 横手市大雄新町
旭岡山神社 旭岡山神社 1 横手市大沢 -
貴船神社 貴船神社 横手市下境 市指定文化財
今木神社 今木神社 横手市十文字町上鍋倉 腕組み型も正座
愛宕神社 愛宕神社 横手市十文字町鼎
三上神社 三上神社 横手市十文字町睦合
古四王神社 古四王神社 横手市十文字町植田
亀田・稲荷神社 稲荷神社 横手市増田町亀田
諏訪神社 諏訪神社 横手市大屋寺内 1体滑落
比叡山神社 比叡山神社 横手市山内筏 -
塩湯彦鶴ヶ池神社 塩湯彦鶴ヶ池神社 横手市山内相野々 -
波宇志別神社本殿 波宇志別神社 横手市大森町 -
新波神社 新波神社 秋田市新波 国登録文化財
神明社 神明社 秋田市戸島  
八幡神社 八幡神社 秋田市本田  
仁井田神明社 仁井田神明社 秋田市仁井田  
磯前神社 磯前神社 秋田市上小山田  
岩見神社 岩見神社 秋田市鵜養  
熊野神社 熊野神社 井川町今戸  
北野神社 北野神社 潟上市天王 市指定文化財
月山神社 月山神社 潟上市昭和大久保  
小深見神明社 小深見神明社 男鹿市払戸 市指定文化財
薬師神社 薬師神社 大仙市荒川 -
蛭川薬師神社 蛭川薬師神社 大仙市蛭川 -
日吉神社 日吉神社 美郷町仙南佐野 町指定文化財
雲厳寺 雲厳寺 仙北市白岩 県重要文化財
金峰神社 金峰神社 仙北市梅沢  
方憧寺 法憧寺 大仙市北長野  
合  計 52 19 30 12 18 22 166  


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